「太平洋に穴が空いている」――Redditが騒然となったあの投稿
Googleマップを何気なくスクロールしていたら、太平洋のど真ん中に真っ黒な三角形がある。そんな不思議な発見を、あるユーザーが2021年に掲示板サイトRedditに投稿しました。投稿はあっという間に拡散して、「あれは何だ?」「洋上のブラックホールじゃないか」「秘密の軍事施設を隠しているんじゃ?」といった声が次々と上がったんです。
インターネット上の陰謀論というのは、不思議なものを見つけた瞬間に一気に広がりますよね。「Googleが意図的に何かを隠している」「宇宙人の基地がある」――そういった想像力豊かな説がいくつも生まれました。でも実際のところ、真相はもっと地に足のついた、そしてある意味では陰謀論より少し考えさせられる話だったんです。
その正体について、Sourceが詳しく報じています。
「黒い三角形」の正体って何?
まず「なぜ黒く見えるのか」というところから整理しましょう。Googleマップ(やGoogleアース)は、衛星写真(人工衛星から撮影した地球の画像のことです)を何枚も組み合わせて、あの広大な地図を作っています。世界中のあらゆる場所を一度に撮影することはできないので、時期の違う複数の画像をつなぎ合わせているんですね。
そのつなぎ合わせの際に、雲の多い日に撮影された画像や、データが欠損(きちんと記録されていない状態のことです)している部分が混ざってしまうことがあります。そういった「情報が足りない箇所」が、地図上で真っ黒に表示されることがあるんです。三角形という形になるのも、衛星が地球を斜めに通過しながら撮影する軌道(衛星が地球の周りを回るコース)の関係で、画像の端が三角形や台形になりやすいからだと考えられています。
つまり、「太平洋に謎の穴が空いている」のではなく、「衛星写真のデータが足りていない部分が黒く表示されている」というのが正体なんです。拍子抜けしましたか? でも、ここからが少し考えさせられる話になります。
「データが足りない」ということの、意外な重さ
「衛星写真のデータが欠けているだけでしょ?」と思った方、確かにその通りです。でも少し立ち止まって考えてみてほしいんです。私たちは今、Googleマップという巨大なサービスを通じて、世界中のほぼあらゆる場所を「見ている気になっている」ですよね。
道案内をしてもらったり、旅行先の街並みをストリートビューで下見したり、遠い国の地形を眺めたり。「地図を見れば世界がわかる」という感覚が、スマートフォンの普及とともに私たちの中にすっかり定着しています。
でも今回の黒い三角形が教えてくれるのは、「私たちが見ている地図は、あくまでもデータの集合体であって、完全ではない」という事実です。衛星写真にも撮影できていない瞬間があり、データには欠損があり、つなぎ合わせには誤差がある。それが視覚的にわかりやすく「黒い穴」として現れたのが、今回の出来事だったわけです。
AIや機械学習(コンピューターがデータから自動的に学ぶ技術のことです)が地図サービスにも活用されるようになった現代では、こうしたデータの欠損を自動補完(足りない部分をAIが推測して埋めること)する技術も進んでいます。ただ、補完されてしまうと「ここはデータが足りていない」という事実自体が見えなくなってしまう、という側面もあります。黒い三角形は不気味でしたが、ある意味では「ここはちゃんと見えていませんよ」という正直なサインでもあったんですよね。
Googleマップのような巨大なデータサービスを日常的に使っている私たちにとって、「このデータはどこから来ていて、どれだけ信頼できるのか」を意識することは、これからますます大切になってくると思います。AIが生成した情報や、自動補完されたデータが増えていく時代に、「見えているもの=正確なもの」とは限らない、という視点を持っておくことが重要なんです。
私たちができる小さな一歩
この話を読んで「じゃあGoogleマップは信用できないの?」と不安になる必要はありません。日常の道案内や場所の確認には、引き続き十分役立つサービスです。ただ、地図や画像、そしてAIが提供する情報を見るとき、「これは完全ではないかもしれない」という小さな疑問を心のどこかに持っておくクセをつけてみてください。
今日できる一歩として、Googleマップで気になる場所を開いたとき、右下に表示される「画像の撮影日」を確認してみるのがおすすめです。意外と古い日付だったり、場所によって撮影時期がバラバラだったりすることに気づくはずです。「見えている=今の状態」ではないことを、自分の目で確かめてみてください。それだけで、デジタルの地図との付き合い方が少し変わってくると思いますよ。






